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更年期障害特有の症状である【ホットフラッシュ】には、ホルモン補充療法がとても有効です。

というのも、ホットフラッシュは明らかにホルモンが不足しているから起こる症状なので、即効性は漢方よりもホルモン補充療法のほうが勝ります。

また、女性ホルモンの分泌がなくなると膣が萎縮し始め、閉経後には乾燥感や性交痛の悩みを訴える女性も増えます。
こういった局所的な症状は漢方薬よりもHRT(ホルモン補充療法)のほうが有効です。

ホルモン補充療法はいつから開始したらいい?

女性ホルモンの分泌が激減することでリスクが高まる骨粗鬆症や動脈硬化、認知症予防という点でもホルモン補充療法は強みを発揮します。
不快な症状の解消とともに、老年期を健やかに過ごす助けにもなる、というわけですよね。

ホルモン補充療法は閉経後5年以内がベスト、といわれています。
5年以内ではホルモン補充療法による副作用も軽減されることもわかってきています。

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(*更年期のココロエ参照)

なお、閉経が確認される前の生理不順の時期に更年期症状が出て、ホルモン補充療法を受けたら少ないながらもまだ自分の卵巣から出ているホルモンと外から投与するホルモンとの相互作用で不正出血が起こりやすくなってしまうことも考えられるのです。

だからといって、閉経前にホルモン補充療法を受けられないわけではありません。
きめ細かく状態を見てくれる婦人科の先生を見つけ、トラブルを減らして快適に受けることは可能です。
が、なかなかそういう先生には自分で見つけるのは難しいですよね。

閉経前の更年期症状にはサプリメントなどの利用を考えてもよいでしょう。

ホルモン補充療法はどんな症状に有効?

NPO法人「女性と健康のメノポーズを考える会」において321人の女性(平均年齢55.2歳)に
HRTの使用効果をアンケート調査してみた結果によると、最も効果的だったのは
女性ホルモンの急激な減少によるホットフラッシュ(血管運動神経症状)でした。

不眠はホットフラッシュのために深く眠れない、寝つきが悪い、ということも多いようです。
2位は鬱症状となっています。

HRT(ホルモン補充療法)によってどんな症状が改善・緩和したか

1位・・・ホットフラッシュ
2位・・・鬱症状
3位・・・頭痛・頭重感
4位・・・不眠
5位・・・性交痛
6位・・・耳鳴り
7位・・・動悸
8位・・・めまい

ホルモン補充療法の強みと留意点

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ホルモン補充療法は強みとともにリスクも伴います。

その代表が乳がん、子宮体がん、血栓症に関する疾患です。

ホルモン補充療法の強み

  • 発汗、ほてり、動悸など自律神経系の不調の解消に即効性がある
  • うつ、骨粗鬆症、動脈硬化、認知症などの予防効果もある
  • ホルモンの減少により起こる膣の乾燥感や性交痛にも有効

ホルモン補充療法の留意点

  • 乳がん・子宮がん・血栓症などの病気がある人は受けられない
  • 長期使用で乳がんのリスクが少し高まる
  • 不正出血や深い症状を伴う場合がある
  • 使用に適した時期とそうでない時期がある
  • きめ細やかな対応ができる医師が限られる

ホルモン補充療法の治療はこのように進みます:閉経前の場合

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婦人科や更年期外来で受けられるホルモン補充療法。
閉経前と閉経後では投与するホルモンの量や投与方法に違いがあります。
安全に続けるためにはがん検診などの定期的な検査も必要。

すべての婦人科・更年期外来がこう、とは限りませんが、婦人科や更年期外来でのホルモン補充療法の進め方を閉経前の方の場合を例にして紹介してみます。

問診

まずは生理の様子を聞かれます。生理不順はあるのか、生理の周期はどんな感じか、などや出血量など。
簡易更年期指数を行い数字によって、更年期症状の可能性かどうかを医師が診断することも。
更年期症状の可能性が高ければホルモン補充療法など他の治療方法を含め、相談をします。

事前検査

症状が本当に更年期によるものなのか、他の病気が隠れていないか、などいくつかの事前検査で調べ総合的に診断します。

内診と経膣超音波検査
内診や経膣超音波検査で子宮や膣、卵巣の様子(閉経の有無を含む)を観察。
これは婦人科や子宮筋腫などホルモン補充療法を行って別緒病気のリスクを上げる心配がないか、を医師が把握するために行います。

がん検査
子宮がん、乳がんの検査はこの2つは女性ホルモンが発症に関わるとされるため、ホルモン補充療法の実施前には必ず行われます。
マンモグラフィー、超音波、必要に応じて細胞診などを行います。

血液検査や骨密度検査など
血液検査では、女性ホルモンの量や貧血の有無、コレステロール、中性脂肪、肝機能、腎機能、ミネラル量などの基本項目も調べます。
体重、血圧、骨量なども調べます。

再診にてホルモン量を診断の上でホルモン補充療法の必要の有無を相談する

血液検査の結果から女性ホルモンの量がわかります。
基本的にE2(エストロゲン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)の値がホルモン補充療法の開始の目安になります。

100pg(ピコグラム)/ml程度あったE2値は閉経後20pg/ml未満になるため、その値に近いほど良い適応になります。
一方、FSHは通常一桁ですが、閉経後は50mlU/ml以上になります。
ただしホルモン地は測定時期によって同じ人でも差が出るため、この数値はあくまでも目安で、医師は症状の強さと考え合わせ治療方針を決めます。

ホルモン補充療法開始 処方と使用時の注意点

ホルモン補充療法には周期的投与法と持続的投与法があります。

周期的投与法
閉経前、直後の人に向く投与方法。
約1か月を1周期とし、12~17日間ほどはエストロゲンだけ。
その後10~12日間は黄体ホルモンも合わせて投与。
その後2~7日休薬し、この間に出血を起こします。
周期的投与法にはエストロゲンを連続で使うパターンと、休薬するパターンがあり、不足しているホルモン量や症状の強さなどで選択します。

持続的投与法
休薬期間を設けず、エストロゲンと黄体ホルモンを毎日使用する方法です。
子宮内膜がもう厚くなることのない閉経後数年たった人向き。
開始後、半年~1年程度は不定期に不正出血がみられるが、これも徐々になくなっていきます。
病気などで子宮を取った人は対がんリスクがないので、黄体ホルモンは必要なくエストロゲンのみを持続投与します。

ホルモン補充療法 薬のタイプ

子宮のある人は体がん予防のため、エストロゲンと黄体ホルモンの併用が基本です。
エストロゲンには 飲み薬・貼り薬(パッチタイプ)・塗り薬があり
黄体ホルモンは飲み薬があります。

また、主に持続的投与法の人向けにエストロゲンと黄体ホルモンを1錠にした合剤(のみ薬ほか、貼り薬も)もあります。おきたr
錠剤による効果の差はありませんが、血栓症や高コレステロール症などのリスクが高めの人は、薬が肝臓を通過しない貼り薬や塗り薬のほうが安心です。

ホルモン補充療法の効果が出るまでの期間

通常、2週間以内に効果が実感できる、と言われ早い人は1日から数日で更年期症状の軽減を感じる人もいます。

4,5年目に継続か中止の検討を行います

このように、問診⇒検査⇒再診⇒投与と行うのですが、症状の軽減の具合などから処方量が変ることもあります。

ホルモン補充療法のやめ時は自分で決めて構いません。
不安な症状が治まり、「もういいかな」と思ったら中止も可。
中止後、再び症状が起こるかどうかは個人差もあり、なんら問題が出ない人もいます。

やめ方も自分で選べます。
急にやめても、徐々にホルモン剤の量を減らしても症状の再燃率は変わりませんが、一般的には徐々に減らしていく方法で様子をみることが多いです。
もし再び症状が起きたらホルモン補充療法を再開してもよいですし
漢方薬やサプリメントに切り替えてもよいのです。

ホルモン補充療法:閉経後の場合

閉経後に更年期障害の症状が出た、ひどくなったという人はとても多いため
閉経後からホルモン補充療法を受ける女性が多いのです。

ホルモン補充療法の進め方は

問診⇒検査⇒診断⇒処方 は閉経前の方と同じです

閉経後の処方薬
閉経している場合には、エストロゲンと黄体ホルモンを毎日使用する持続的投与法で行われることが多いようです。